
アトピー性皮膚炎の『デュピクセント』
デュピクセント(一般名:デュピルマブ)は、アトピー性皮膚炎の新しい治療薬です。
従来のステロイドや保湿剤などの外用治療に比べて、免疫の根本的な異常に働きかけるのが特徴です。
アトピーは単なる肌トラブルではなく、体の中の免疫異常によって起こる慢性疾患です。
デュピクセントはこの免疫の暴走、特に「Type2炎症」と呼ばれる反応を抑えることで、かゆみや赤み、湿疹を改善していきます。塗り薬だけでは改善が難しい中等症〜重症の患者さんに新たな希望となる治療法です。
『デュピクセント』は皮膚の炎症反応を抑制する新しいタイプのお薬です
アトピー性皮膚炎の新薬『デュピクセント』は、アトピー性皮膚炎の皮疹やかゆみの原因になっている「IL-4」と「IL-13」というタンパク質の働きを直接抑えることで、皮膚の炎症反応を抑制する新しいタイプのお薬です。
炎症反応を抑えることによって、かゆみなどの症状や、皮疹などの皮膚症状を改善します。
デュピクセントは、治療が受けられる条件や注意点がありますので、以下をご確認の上、ご相談ください。
デュピクセントと既存治療との違い
アトピー性皮膚炎の治療といえば、これまでは「ステロイド外用薬」や「保湿剤」が中心でした。
炎症を直接抑えて、かゆみや赤みをコントロールする”対症療法(症状をおさえる治療)”です。
もちろん、今でもとても大切な治療ですが、毎日何度も塗るのが大変だったり、うまく効かないこともあります。
デュピクセントはこれまでの治療と違い、アトピーの「根っこ」にある免疫の異常(Type2炎症)をピンポイントで抑える薬です。
つまり「表面的な症状」ではなく「体の内側の原因」に働きかける新しいタイプの治療です。
塗り薬ではコントロールが難しかった方や、広範囲に湿疹がある方にとって、全身の炎症を安定させてくれる心強い選択肢です。
注射という形にはなりますが、今までの治療で限界を感じている方にこそ、検討してほしい方法です。
デュピクセントは、かゆみにも効果的です
「かゆくて寝られない」「無意識に掻いてしまう」…そんなつらい症状に悩まされている方には、デュピクセントがかゆみを抑える新しい選択肢になります。
アトピー性皮膚炎のかゆみは、神経の過敏さと免疫の異常が関係しており、デュピクセントはその両方に作用します。
実際、多くの患者さんが「初回投与からかゆみが楽になった」と感じています。
かゆみが減ることで、皮膚の掻き壊しも減り、結果的に皮膚も改善していくのがポイントです。
原因・治療について
治療が受けられる条件
- 既存治療では効果が十分に得られない方
- ステロイドや光線療法などの既存治療でコントロールできている患者さんには投与できません。
また、投薬はアトピー性皮膚炎の重症度判定で一定以上のスコアが高い方に限られます。 - 生後6ヶ月未満には投与できません。
- 費用が負担できる方、何らかの補助が受けられる方
- 開始月は、2回の通院が可能な方。
- 開始月は2週間に1回の注射が必要です。
そのため、開始月に2回の通院が可能な方でなければ治療はできません。
また、自己注射が可能になりましたが、注意点や注射前の準備、保管方法など、適切に効果を得るために守らなければならない事が沢山あります。
詳しくは、医師までご相談ください。 - 外用治療も併用できる方
- 今までしっかり外用療法を行えているかどうか、また、治療開始後も、外用治療もしっかり続けられる方に限られます。
デュピクセントの特性
- しっかりとした説明を読みたい方は、デュピクセントのサイトをご参照ください。動画もあります。
- アトピー性皮膚炎の皮疹やかゆみの原因になっているものを選択的にブロックする薬剤です。
- アトピー性皮膚炎を引き起こす主役は、Th2というリンパ球です。
Th2リンパ球からIL-4、IL-13などのタンパク質が分泌されますが、このIL-4とIL-13が皮膚のバリア機能の低下や、炎症の促進を引き起こし、その結果アトピー性皮膚炎が発症すると考えられています。
デュピクセントは、このIL-4とIL-13というタンパク質の作用をブロックし、アトピー性皮膚炎の発症や増悪を抑制するお薬です。
デュピクセントの投与
- デュピクセントは投与開始日のみ、2本を皮下注射します。
- その後は2週間に1回、1本を皮下注射します。
- 注射部位は、上腕部(二の腕の外側)、腹部(おへそ回り)、両大腿(ふともも)です。
!投与に注意が必要な方
- 寄生虫感染のある方
- 生ワクチンを接種する予定のある方
- 妊婦または妊娠している可能性がある方、授乳中の方
- 高齢の方
- 喘息等のアレルギー性疾患をお持ちの方
主な副作用
デュピクセントは、副作用が比較的少なく、安全性の高いお薬です。これまでに重篤な副作用の報告はほとんどありません。
よく見られる副作用としては、結膜炎が挙げられます。そのため、必要に応じて眼科の受診をご案内することがあります。また、顔の赤みが残るケースもみられます。
「デュピクセントで太ることはありますか?」というご質問をいただくことがありますが、現在のところ、体重増加に関する明確な報告はありません。
- 目やまぶたの炎症症状
- 注射部位の発疹や腫れ、かゆみ
可能性のある副作用
- ふらつき感
- 息苦しさ
- 心拍数の上昇
- めまい
- 嘔気
- 嘔吐
- 関節痛
- 発熱
- 血管性浮腫
- 口周り、唇の発疹
自己注射について
デュピクセントは2週間に1回の注射薬で、最初は当院での指導を受けてからのスタートとなりますが、その後はご自宅で自己注射を行うことが可能です。
2019年6月より自己注射が認められるようになり、これにより3ヶ月分の注射剤が処方できるようになりました。
自己注射に切り替えることで、通院は3ヶ月ごとで済み、年収によっては高額療養費の助成を受けられる場合もあります。
注射にはオートインジェクターという注射器を使用し、皮下に注射するだけなので、慣れれば数分で完了します。
注射に不安を感じる方には、院内で最低2回以上の指導を行い、継続して2週間ごとの通院による注射も可能です。
日常生活に合わせて治療ができ、通院負担の軽減にもつながります。
当院スタッフがしっかりサポートいたしますので、ご安心ください。費用負担などについても、クリニックで詳しくご説明いたします。
デュピクセントの治療費
- デュピクセントは保険適応しています。
- 別途、初診料、再診料、処方箋料など必要となります。
- 保険3割負担の方で『薬剤費』は1本あたり約16,000円です。
2週間ごとに注射をします。1ヶ月あたり3割負担の方で約32,000円の『薬剤費』が必要となります。
ただし、年齢・年収・加入している健康保険組合により異なりますが、高額療養費制度の対象となり、自己負担額の上限以上は補助を受けることができる場合があります。 - 一部の企業にお勤めの方では、企業の健康保険組合による付加給付制度により、一定額以上は補助を受けることができる場合もあります。
デュピクセント®の薬剤費
価格 | |
---|---|
ペン 300mg(1本あたり) | 53,659円 |
シリンジ 300mg(1本あたり) | 53,493円 |
自己負担額(ペンの場合・窓口で支払う金額)
負担率 | 初回(2本) | 2回目以降(1本) |
---|---|---|
10割 | 107,318円 | 53,659円 |
3割 | 32,196円 | 16,098円 |
2割 | 21,464円 | 10,732円 |
1割 | 10,732円 | 5,366円 |
- ※2024年11月現在のデュピクセント®の薬価をもとに計算しています。
- ※3割:6歳~69歳、70歳以上で現役並み所得者
- ※2割:70歳~74歳で一般・低所得者
- ※1割:75歳以上で一般・低所得者
よくある質問
デュピクセント治療については電話でお問い合わせください。
電話番号:078-262-1211