『アドトラーザ』はアトピー性皮膚炎用の皮下注射です
『アドトラーザ』について
アドトラーザの有効成分はトラロキヌマブであり、これはIL-13を選択的に阻害するヒト免疫グロブリンIgG4モノクローナル抗体です。
トラロキヌマブはIL-13がその受容体に結合するのをブロックします。
IL-13はアトピー性皮膚炎の病変の発症と進行に重要な役割を果たすため、IL-13をブロックすることは合理的な治療です。
治療が受けられる条件
- 既存治療では効果が十分に得られない方
- ステロイドや光線療法などの既存治療でコントロールできている患者さんには投与できません。
また、投薬はアトピー性皮膚炎の重症度判定で一定以上のスコアが高い方に限られます。 - 15歳以上の方
- 自己注射を希望される場合
-
- 当院で最低2回以上の指導を受けていただくことが可能な方
- 3ヶ月ごとの当院での受診が可能な方
- 外用療法も併用できる方
- 治療後も外用療法がしっかりできる方に限ります。
『IL-13』について
アトピー性皮膚炎の発症と進行において、重要な役割を果たすのはTh2細胞というリンパ球です。
Th2細胞はIL-13やIL-4などのサイトカインを産生し、これによって皮膚のバリア機能の低下、抗菌ペプチドの産生減少、かゆみに関連するIL-31の産生などが引き起こされ、アトピー性皮膚炎の特徴的な病変が形成されます。
特にIL-13はIL-4とは異なり、アトピー性皮膚炎の病態形成において中心的な役割を果たすことが知られています。
さらに、線維化(組織の線維組織化)においてもIL-13が重要な役割を果たすことが分かっており、アトピー性皮膚炎の慢性病変である皮膚のゴワつき(苔癬化)にもIL-13の影響があることが示されています。
IL-4のブロック治療が適切か否かについては、議論が続いており、一概には結論が出ていません。
IL-4およびIL-13の働きをおさえるデュピクセントが2018年に発売開始されて以降、中等~重症アトピー性皮膚炎の治療法の選択肢の幅が広がりました。
当院でも多くの患者様がデュピクセント治療を受け、「ほとんどステロイド外用剤を塗らなくてもすむようになった。」や「かゆみのために夜中に起きることかなくなった。」などとおっしゃっていただける非常に満足度の高い治療でございます。
しかし、一方でデュピクセントの注射だけでは、満足できていない患者様もいらっしゃるのは事実です。
アドトラーザの投与方法
アドトラーザは注射製剤です。
初回は、4本の皮下注射が行われ、その後2週間ごとに2本の注射が行われます。
現時点では、長期処方ができないため、2週間ごとに当院へご来院いただくことになります。
2024年4月より自己注射が認められるようになりました。
これにより3ヶ月分の注射剤が処方できます。
自己注射をするためには、院内で最低2回以上の指導を受けていただく必要があります。もちろん、自己注射に不安を感じる方は、2週間ごとに通院での注射を継続していくことも可能です。
自己注射へ切り替えていくことにより、3ヶ月ごとの受診で治療を継続することができ、年収次第では、高額療養費の助成を受けることができるというメリットがあります。これらの費用負担についてはクリニックで詳しくご説明いたします。
※左右にスクロールさせてご覧ください。
デュピクセントとの違い
現状不明な点が多い状況です。
一方で、デュピクセントと違い、IL-13の作用だけを抑えるということで、デュピクセント投与で起こりやすいアレルギー性結膜炎や顔面紅斑が少ないのではと、考えられております。
アドトラーザの治療費
- アドトラーザは保険適応しています。
- 別途、初診料、再診料、処方せん料などがかかります。
- 年齢・年収・加入している健康保険組合により異なりますが、高額療養費制度の対象となり、自己負担額の上限以上は補助を受けることができる場合があります。
- 一部の企業にお勤めの方では、企業の健康保険組合による付加給付制度により、一定額以上は補助を受けることができる場合もあります。
アドトラーザの薬剤費
価格 | |
---|---|
1本あたり | 29,295円 |
自己負担額(窓口で支払う金額)
負担率 | 初回(4本) | 2回目以降(2本) |
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10割 | 117,180円 | 58,590円 |
3割 | 35,154円 | 17,577円 |
2割 | 23,436円 | 11,718円 |
1割 | 11,718円 | 5,859円 |
- ※令和5年10月現在のアドトラーザの薬価をもとに計算しています。
- ※3割:6歳~69歳、70歳以上で現役並み所得者
- ※2割:70歳~74歳で一般・低所得者
- ※1割:75歳以上で一般・低所得者