梅毒発生数(2021年)は前年より日本国内で増加(約30%)しました
新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、人々の感染対策が強化され、コロナ以外のインフルエンザなどの既存の感染症は減少傾向となっています。しかし、梅毒に関してはコロナ禍でもむしろ増加に転じており、2021年の梅毒発生数は前年より全国で約30%増加しています。
梅毒の原因
性行為によって、梅毒トレポネーマが粘膜に感染することで引き起こされます。
性行為による感染だけでなく、妊娠中の母子感染によって子どもにうつるケースもあります。
先天梅毒
妊婦が感染している状態だと、胎盤を通して胎児が感染する先天梅毒の原因になります。早産や死産、出産しても新生児に奇形が現れることがあります。
梅毒の感染経路
感染者の血液、精液、膣分泌液などに含まれており、性行為により非感染者の粘膜や皮膚に直接接触することにより感染します。
性行為には性器の接触だけでなく、口や肛門などの性的な接触すべてが含まれます。
傷口からも感染するため、キスも感染経路となります。
また、母子感染(お母さんからお腹の赤ちゃんへの感染)は高確率で発生しますので、妊娠時には梅毒検査は必須です。
梅毒の潜伏期間
感染後3週間から6週間前後が潜伏期間になります。
梅毒の症状
症状により第1期から第4期まであり、第2期までを早期顕性梅毒 、第3期以降を晩期顕性梅毒と分類されています。
現在では、第3期や第4期の末期まで進行することはほぼなく、第2期までの比較的初期に診断および治療されています。
- 初期:第1期
- 初期の症状としては、感染が起きた部位(陰部や唇付近、口の中、肛門付近)のしこり、びらん、潰瘍などがありますが、股のつけ根が腫れることもあります。
治療をしなくても、一定期間が過ぎると最初の症状は消えます。
けれども体内から菌が消えたわけではなく、この時期に性接触があると他人が感染する可能性がある状態です。 - 感染後数ヶ月:第II期
-
治療をしないまま3ヶ月以上放置すると梅毒が進行し、菌が血液によって全身をめぐります。手のひらや足のうらを含めた全身に、赤い斑点(バラ疹)が拡がります。
発疹は治療をしなくてもしばらくすると消えることがありますが、抗菌薬での治療をしない限り梅毒トレポネーマは体内に残ったままです。 - 晩期顕性梅毒(数年後)
- 感染から数年がたつと、皮膚、筋肉、骨、臓器に腫瘍が発生します。
梅毒の検査 : TP/RPR定量検査(採血検査)
まず、梅毒と診断すれば、必ず治療前に再度採血を行い、TTPとRPRの実際の数値を測定する定量検査を行うことが必須です。(診断に用いる採血検査はTP、RPRの定性検査で陽性か陰性の判定しかできず、実際の数値は測定できません)症状があっても、その症状は治療しなくても自然に治る性質があるため、症状の経過で治療効果の判定はできません。
感染機会から4週間以上経っていれば、検査することができます。
検査方法は、採血による血液検査で感染の有無を確認します。RPRとTPHAの定性検査を実施します。
検査結果の見方
- RPR(+)TPHA(+) : 梅毒に感染しています。
- RPR(-)TPHA(-) : 梅毒に感染していません。
- RPR(+)TPHA(-) : 初期の感染の可能性。生物学的偽陽性
- RPR(-)TPHA(+) : 梅毒の治癒後。TP法の偽陽性
もしも検査の結果「RPR(+)TPHA(+)」が出た場合には、治療開始する必要があります。
治療を継続すれば完治させることが可能です。
治ったかどうかの判定は、RPRの定量検査(抗体の血液検査)を行います。治療開始から1ヶ月に1度のペースで測定します。
梅毒の治療方法
抗生物質の飲み薬であれば、毎日薬を服用する必要があります。
第1期であれば2~4週間、第2期であれば4~8週間の服用が目安になります。
当院ではステルイズという筋肉注射での治療が可能です。
ステルイズはベンジルペニシリンベンザチン水和物(以下、PCGベンザチン)の注射剤で1回投与で約1ヶ月の効果があり、成人の2期までの梅毒には1回投与で治療可能なくすりとなっております。
注射での治療と抗生物質のの内服治療比較
毎日の内服が面倒な方は、注射での治療も可能ですので、お気軽にご相談ください。
筋肉注射 | 内服 | |
---|---|---|
受診回数 | 治療のために1回 | 治療終了後1回 |
治療期間 | 単回投与 | 1ヶ月毎食内服 |
投与方法 | 18ゲージの太い針でお尻に注射 | 朝昼晩内服 |
費用(3割負担の場合) | 約3,000円~4,000円 | 約2,000円~2,500円 |
治療効果判定時期 | 1ヶ月 | 1ヶ月 |
治療効果判定方法 | 採血 | 採血 |
性交渉再開時期 | 治療効果判定で治癒を確認してから | 治療効果判定で治癒を確認してから |
メリット | ・1回の注射で治療が終えられる ・薬の飲み忘れを気にしなくて済む |
体調不良時休薬可能 |
デメリット | ・アレルギーのコントロールが内服に比べ難しい ・内服に比べて高価 ・治療後30分待機 |
毎食後の内服が必要 |
梅毒の予防
コンドームを使用することで、粘膜の直接の接触を避けることが予防になります。
注意点
- 梅毒は感染した後しばらくすると自然に症状がなくなりますが、治ったわけではなく感染状態が続きます。
- 梅毒が進行してしまうと、その分治療期間は長くなります。
- 早期発見、早期治療開始により、短い期間で治療を終えることが可能です。
- 治療後もフォローが必要です治療後は一年間のTP RPR定量検査の採血フォローが必要です。